3 ディスプレイとアダプタについての基礎知識

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Xconfig の設定項目をさわる前に、以下の基礎的な事項を知っておく必要がありま す。

  1. モニターの水平同期信号と垂直同期信号の周波数
  2. ビデオアダプタの動作クロック周波数、または"ドットクロック"
  3. モニターの周波数帯幅
です。

モニターの同期周波数 :

モニターの水平同期周波数は、そのモニターが1秒間に書ける水平走査線の数のこ とで、これはモニターについて最も重要な統計値です。垂直同期周波数は、そのモ ニターが1秒間に電子ビームを縦方向に通過させることのできる回数のことです。

同期周波数は普通、モニターのマニュアルの仕様の頁に一覧になっています。垂直 同期周波数の数値は一般的に Hz(秒当たりの単位周期)で、水平同期周波数は KHz(秒当たりの千単位周期)で計測されています。通常の範囲は垂直については 50 から 80Hz、水平については 31 から 135KHz 程度です。

マルチスキャンモニターの場合、その周波数は幅のある値として表示されています。 ローエンドのものに多いのですが、複数の固定した周波数を持っているモニターも あります。このようなモニターも普通のモニターと同様に設定は出来ますが、モニ ターの持つ特徴に厳しく制限されてしまうでしょう。最高の解像度が得られるよう な最も高い水平同期と垂直同期周波数の組み合わせを選択してください。そして、 固定周波数モニターでは設計値より高い周波数を与えるとモニターを痛めるおそれ があるので注意してください。

カードの動作周波数 :

ビデオアダプタの仕様書にカードのドットクロックがあります(ドットクロックと は画面へ1秒間に点を表示できる総数です)。この情報が無い場合は、X サーバー がそれを取ってきます。X がモニターを固めてしまった場合でも、クロックとその 他の情報を標準出力に吐き出します。この情報をファイルにリダイレクトした場合、 コンソールへ戻って再立ち上げしなければならなくなってもファイルに保存されま す。

SGCS X を使っている場合は、次の例のような行をローカルバス接続の S3 アダプ タの Swan から収集します。XFree86 はちょっと難しい複数行にわたる書式を使っ ています。

WGA: 86C911 (mem: 1024k clocks: 25 28 40 3 50 77 36 45 0 0 79 31 94 65 75 71)
---  ------       -----         --------------------------------------------
 |     |            |                 動作可能な周波数を MHz で表わします。
 |     |            +-- ボード上のフレームバッファメモリの大きさ
 |     +-- チップの型式
 +-- サーバーの種類

注意: なるべくこの作業はマシンの負荷が低い時に行なって下さい。X はアプリケ ーションですから、ディスクの動作と時間調節のループが衝突すると、上記の数字 は不正確になります。何回か繰り返し実行し、数字が大きく変動しないことを確か めて下さい。もし変動が大きい場合には、安定するまでプロセスを殺してみてくだ さい。SVr4(システム V リリース 4) を使用している人へ: mousemgr(マウスマ ネージャー)プロセスは特に混乱の元です。

このような不正確さを避けるため、得られたクロックの数字をそのまま Clocks プ ロパティの値として Xconfig に取り込んで下さい。これは時間調節のループを抑 止し、X が試してみることのできるクロックの値の正確な一覧を与えるためです。 上記の例のデータを使うと、次のようになります。

wga
        Clocks  25 28 40 3 50 77 36 45 0 0 79 31 94 65 75 71

高く変わりやすい負荷が掛かったシステムでは、この方法は X の起動時に陥るこ とがある不思議な失敗を回避する助けになるでしょう。X が起動した時システムの 負荷のせいで間違った値を得てしまい、config データベースから丁度いいドット クロックを見つけることが出来なかったり、間違ったものを見つけてしまうことが あり得るのです。

The monitor's video bandwidth:

モニターのビデオ信号帯域幅 :

モニターのビデオ信号帯域幅を知っておくことは、使用できる最も高いドットクロ ックのおおよその値を知るのに有用です。しかし、この値は柔軟性に富んでいます。 例えば、名目上の帯域幅の 30% 増しで動作できるモニターもあります。

帯域幅を知ることは可能な構成定義からより賢い選択ができるようになります。あ なたのディスプレイの表示品質(特に高精細のためのシャープさ)に影響を及ぼし ます。

モニターのビデオ信号帯域幅はマニュアルの仕様の頁に載っています。無かった場 合は、モニターの最も高い解像度のところを見てください。解像度から帯域幅(つ まり使用できるドットクロックの大まかな上限値)を推定するための経験則を下に 示します。

        640x480                 25
        800x600                 36
        1024x768                65
        1024x768 interlaced     45
        1280x1024               110

ところで、この表は絶対的なものではありません。これらの数字は標準的な XFree86 モードデータベースでの解像度毎の最も低いドットクロックです。モニタ ーの帯域幅は一番上の解像度に要求される最小の帯域幅より高いでしょうから、恐 れずにドットクロックを数 MHz 高めに試してみてください。

また、ドットクロックが 65MHz 位より低い場合には帯域幅はほとんど問題になら ないことに注意してください。SVGA やほとんどの高解像度のモニターでは、これ はモニターのビデオ信号帯域幅の限界よりもはるかに低い周波数ですから。次に例 を示します。:

        ブランド名                      ビデオ信号帯域幅
        ----------                      ----------------
        NEC 4D                          75Mhz
        Nano 907a                       50Mhz
        Nano 9080i                      60Mhz
        Mitsubishi HL6615               110Mhz
        Mitsubishi Diamond Scan         100Mhz
        IDEK MF-5117                    65Mhz
        IOCOMM Thinksync-17 CM-7126     136Mhz
        HP D1188A                       100Mhz
        Philips SC-17AS                 110Mhz
        Swan SW617                      85Mhz

一番下のクラスのモニターでも、解像度に関して非常にビデオ信号帯域幅に制約を 受けることはありません。NEC マルチシンク II が良い例です(仕様によれば 800x600は表示出来ない)。そのディスプレイは 800x560 のみ表示できます。この ような低解像度の場合は、高いドットクロックや大きなビデオ信号帯域幅を必要と しなく、多分 32Mhz か 36Mhz で十分で、両方の周波数ともモニターのビデオ信号 帯域幅である30Mhz からそれ程かけ離れた値ではありません。

これら 2 つの動作周波数では、ディスプレイの持っている性能よりくっきりと表 示しないかもしれませんが、でもかなりの品質だと言い切ってもいいでしょう。勿 論、NEC マルチシンク II がもっと高い、例えば 36MHz ビデオ信号帯域幅を持っ ているに越したことはありません。しかし、大きく画像が歪む程周波数がかけ離れ ていなければ、文章を編集する等の一般的な作業には問題はありません。(もし画 像の歪みがあまりにも大きい場合には、目で見てすぐわかるでしょう)。

どうやって制御するか :

モニターの同期信号帯域幅は、ビデオアダプタのドットクロックと共に、表示でき る最高の解像度を決定します。しかしハードウェアの性能を引き出すのはドライバ ーです。どんなに優れたビデオアダプタやモニターでも、良いデバイスドライバー がなければ宝の持ち腐れになってしまいます。一方、有能でないハードでも多目的 に使用できるデバイスドライバがあれば十分役に立ちます。これが XFree86 の設計哲 学です。

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