Tseng はメモリのバンド幅について妄想を持っているようで、ET6000 のバン ド幅に関する報道関係へのアナウンスも例外ではありません。
Tseng は、MDRAM を使っている ET6000 は 1.2GB/秒のバンド幅が出せるとい う信じられないことを言っています。これでは市場に出ているどんな製品も (SGI のグラフィックスワークステーションさえ)上回ってしまいます。
「もし」利用できる最速の MDRAM を実際にボードに載せていれば、これは本 当になるでしょうが、そんな RAM は載せていません。聞こえの良い 1.2GB と いう数字は、4 つの MDRAM チップを最大のクロックレートである 166MHz で 使った時に出るものです。しかし設計による制限のため、最初の世代の ET6000 はメモリを 92MHz でしか駆動できません(ET6100 や ET6300 が出れば この数値は変わるでしょう)。
つまり、現在の ET6000 ボードで実現できる理論的な最大のバンド幅は「たっ た」 320 MB/秒(MDRAM チップを 2 つ載せたボード)か 720MB/秒(MDRAM チッ プを 4 つ載せたボード)なのです。さらに、これは最善の場合を想定した数字 です(すなわち、ここではバースト転送を極めて長いものとしていますが、実 際には MDRAM は PCI バスと同様にアドレスバスやデータバスを共有します)。 現実には、PCI バスとアクセラレータ両方から来る順序が不定のアクセスによ り、利用できるバンド幅の実効値はもっと低くなります。現在の ET6000 ボー ドの最大性能は、DRAM が 2 つまたは 4 つの場合で約 225MB/秒 です。
プレスリリースをどんなに見たところで、ET6000 のメモリのバスは 32 ビッ トです(128 ビットではありません。いずれにしても、この数字はチップ内の アクセラレータのデータ経路だけです)。つまり、このチップの 16 ビットバ スでは、MDRAM チップ 2 つだけでバスの容量を全て使ってしまいます。 ET6000 ボードにメモリチップが 4 つ載っていても、メモリのバンド幅が増え るわけではありません。
ある色の深さで利用できる最大の解像度は、メモリのバンド幅による制限を受 けます。ET6000 の RAMDAC はどんな場合でも 135MHz でうまく動作できます。 しかし、RAM についてはそうではありません。32bpp (sparse 形式の 1600万 色モード)でピクセルクロック値を 135MHz にすると、メモリのバンド幅は 135*4 = 540 MB/秒が必要となります。これは現在の ET6000 ではどうやって も扱えません。PCI バスやアクセラレータの場合には、バンド幅をもっと節約 する必要があります。
以上が、あるモードのために十分なメモリがあっても、MDRAM のメモリ配置に よっては使えないモードがある理由です。利用できるメモリのバンド幅が足り ない場合に起こる問題については、トラブルシューティングのセクションを参 照してください。